本書の特徴
本書は木曽義仲の誕生から最期までを詳細に述べたものではない洛中(京都の市中)の事件に焦点を当て、真相を解明し説明したものである。
闇に隠された事件の真実を説明するため、本書は他の歴史解説書と異なり、史料による説明順序が事件の発生の年月日順ではない。真相は断片的に史料に表れている。その関連に気付きにくいのである。
他の歴史解説書では、史料のある時点の一部の記述のみに気をとられ、応仁の乱や戦国時代などの軍勢や、近代の軍隊が都会や敵地に侵攻すると乱暴・略奪の例が多いので、木曽義仲軍もそうだと単純に断定している。しかし真相は異なるのだという事を解明し説明している。
また他の歴史解説書に比べ引用文を多めにしてある。これは著者の主張に都合の良い部分のみ引用して読者に誤解を与えるのを防ぐためである。また入手困難な史料のテキストとしても使える。
しかし、史料としては敵側となる京都の公家の日記や鎌倉政権の記録による伝聞・風聞が主なので、真の義仲像が得られたわけではない。せいぜい義仲は乱暴者とか暴れん坊将軍という通説は誤りであるという結論のみである。〈著者〉